本文へ移動
いちばのみらい
市場の課題

全国の仲卸業者数はどれくらいあるのか。卸売市場データから見る市場の現在地

農林水産省の卸売市場データ集をもとに、全国の中央卸売市場、地方卸売市場、品目別の仲卸業者数と取扱金額を整理し、変化をグラフで見ます。

約10分 いちばのみらい編集部

市場について話すとき、「仲卸が減っている」「市場の取扱量が減っている」という言葉はよく出てきます。ただ、言葉だけでは、どれくらい減っているのかが見えにくいところがあります。

この記事では、農林水産省の「卸売市場データ集 令和6年度」をもとに、全国の卸売市場数、中央卸売市場の仲卸業者数、取扱金額を整理します。

ここで書く内容は、公開資料をもとにした読み取りです。全国のすべての市場事情を断定するものではありません。特定の市場や会社の現場を手伝う中で見えてきた問題意識を、まず公開データと照らしてみるための入口として読んでください。

市場数と仲卸業者数はどれくらい減っているか

まず見たいのは、現在の数より「減り方」

農林水産省のデータ集では、中央卸売市場は令和6年度末時点で64市場、39都市にあります。中央卸売市場の仲卸業者数は令和5年度末で2,685業者、取扱金額は令和5年度で3兆7,436億円です。

この現在値だけを見ると、まだ大きな流通インフラであることは分かります。ただ、記事として見たいのは「いま何件あるか」だけではありません。どの指標が、どの期間で、どれくらい減っているのかです。

公開データから、まず次の3つを並べて見ると、変化がかなりつかみやすくなります。

全国データで見る3つの減少

指標比較減少幅
中央卸売市場数H19 81市場 → R6 64市場17市場減、約21.0%減
地方卸売市場数H19 1,237市場 → R5 909市場328市場減、約26.5%減
中央卸売市場の仲卸業者数H25 3,665業者 → R5 2,685業者980業者減、約26.7%減
中央卸売市場の取扱金額H19 4兆5,762億円 → R5 3兆7,436億円8,326億円減、約18.2%減

この表だけでも、いくつかのことが見えてきます。市場数も、仲卸業者数も、取扱金額も減っています。ただし、減り方は同じではありません。

たとえば、中央卸売市場数はH19からR6で約21%減です。一方、中央卸売市場の仲卸業者数はH25からR5で約27%減です。比較期間が違うので単純には並べられませんが、少なくとも「市場数だけでなく、市場の中で担う人の数も減っている」と見ることはできそうです。

中央市場と地方市場は、同じ表に入れても分けて読む

現在値を整理すると、中央卸売市場と地方卸売市場は次のようになります。

区分市場数取扱金額卸売業者数仲卸業者数売買参加者数
中央卸売市場64市場・39都市3兆7,436億円1532,68519,845
地方卸売市場909市場2兆9,768億円1,0632,19878,634

ここは少し注意が必要です。中央卸売市場の仲卸業者数と、地方卸売市場の仲卸業者数は、制度や市場ごとの運用が違います。なので、「全国の仲卸は合計で何社」と単純に足し上げるより、まずは中央と地方を分けて見るほうがよさそうです。

中央卸売市場は、大都市圏や広域流通の拠点としての性格が強い市場です。一方で、地方卸売市場は地域の流通を支える市場として、数の上ではかなり多く残っています。

この違いを分けておくと、次の記事で東京都、大阪、名古屋、福岡などを比較するときにも、見方がぶれにくくなります。

品目別に見ると、水産と食肉の減少率が大きい

中央卸売市場の仲卸業者数を品目別に見ると、令和5年度末では水産物が1,383業者、青果が1,177業者です。仲卸業者数の多くは、この2分野に集中しています。

変化を見ると、H25からR5にかけて、青果は1,453から1,177へ減っています。減少幅は276業者、約19.0%減です。水産物は2,036から1,383へ減っており、減少幅は653業者、約32.1%減です。

食肉も73から50へ減っており、減少率は約31.5%です。ただし、食肉はもともとの業者数が少ないため、水産物のように減少数そのものが大きいわけではありません。「その他」は母数が小さく、減少率だけが大きく見えやすいため、ここでは主要品目の比較から外しています。

品目別に見た仲卸業者数の減少比較

品目H25R5減少幅減少率
青果1,4531,177276減約19.0%減
水産物2,0361,383653減約32.1%減
食肉735023減約31.5%減
花き887216減約18.2%減
3,6652,685980減約26.7%減

もちろん、この数字だけで「なぜ減ったのか」までは言えません。漁獲量、入荷量、専門小売店の減少、飲食店の仕入れ方、量販店との取引、物流費、人手不足など、複数の要因を見ないと説明しきれないはずです。

ただ、全国データの入口としては、水産物は「減少率も大きく、減少数も大きい」ため、次に深掘りする優先度が高い品目だと見てよさそうです。

取扱金額は、品目によって減り方が違う

中央卸売市場の取扱金額は、H19からR5までの長期で見ると減っています。ただし、品目別に同じ形で比較するなら、全品目の数字がそろっているH25とR5を並べるほうが見やすくなります。

H25からR5で見ると、青果は1兆9,178億円から1兆8,968億円へ、約1.1%減です。水産物は1兆6,014億円から1兆4,178億円へ、約11.5%減です。一方で、食肉は2,475億円から2,958億円へ増えています。

品目H25R5変化幅変化率
青果1兆9,178億円1兆8,968億円210億円減約1.1%減
水産物1兆6,014億円1兆4,178億円1,836億円減約11.5%減
食肉2,475億円2,958億円483億円増約19.5%増
花き1,268億円1,179億円89億円減約7.0%減
3兆7,132億円3兆7,436億円304億円増約0.8%増

この期間で見ると、合計はほぼ横ばいです。ただし、品目別に見ると、水産物は減少、食肉は増加という違いがあります。

品目別に見た取扱金額の比較

ただし、取扱金額だけではまだ足りません。金額は、数量と単価の掛け算です。数量が減っても、単価が上がれば金額の落ち込みは小さく見えることがあります。逆に、金額が減っている場合でも、それが数量減なのか、単価低下なのか、品目構成の変化なのかは分けて見る必要があります。

その意味で、全国編はあくまで入口です。次に見るべきなのは、数量、金額、平均価格を同じ期間で並べることです。

なぜ水産物の減少が大きく見えるのか

ここは、まだ断定せずに見たいところです。農林水産省のデータ集だけで「原因はこれ」と言い切るのは難しいからです。

ただし、同じ資料の中でも、水産物の減少を読むための手がかりはいくつかあります。

水産物の仲卸減少を見るための手がかり

1つ目は、取扱金額の変化です。全品目で比較できるH25からR5で見ると、中央卸売市場の水産物取扱金額は1兆6,014億円から1兆4,178億円へ減っています。金額ベースで約11.5%減です。同じ期間で、合計はほぼ横ばいなので、水産物だけを見ると弱さが出ている可能性があります。

2つ目は、仲卸業者の経営指標です。令和5年度の中央卸売市場仲卸業者の経営動向では、水産物の営業利益率は-0.1%です。また、水産物の仲卸法人企業のうち、営業損失を計上した割合は53.5%、経常損失を計上した割合は40.5%とされています。これは、撤退や統合が起きやすい環境かどうかを見るうえで重要な数字です。

3つ目は、買い手側の構造です。令和5年度末の中央卸売市場の水産物売買参加者数は3,431で、業種別割合では一般小売店が47.8%、その他の事業者が26.9%です。一般小売店や飲食店などの買い方が変わると、仲卸が得意としてきた小口対応、品揃え、目利き、配送の役割にも影響が出る可能性があります。

つまり、水産物の仲卸業者数が大きく減っている背景は、単に「魚が売れない」という一言では説明しないほうがよさそうです。取扱金額、数量、単価、買い手の変化、仲卸業者の収益性を重ねて見る必要があります。

「市場がなくなる」とは言わず、まず変化を分けて見る

この記事では、市場の将来について大きく言い切ることは避けます。公開データを見ても、すぐに「市場はこうなる」と断定できるほど単純ではないからです。

ただ、少なくとも次のような問いは立てられます。

  1. 市場数が減ると、地域ごとの荷の受け皿はどう変わるのか
  2. 仲卸業者数が減ると、小口の実需者に合わせる機能はどう変わるのか
  3. 水産物の取扱金額が大きく減っている背景には、数量減がどれくらいあるのか
  4. 金額が維持されている市場でも、数量や来場者は減っていないか
  5. 中央市場と地方市場で、同じ課題が出ているのか、違う課題が出ているのか

この問いを置くために、全国の市場数、仲卸業者数、取扱金額をまず可視化しました。ここから東京都、名古屋、大阪、福岡などの主要都市に進むと、より具体的な違いが見えてくるはずです。

全国データは、東京編と主要都市比較の土台になる

仲卸業者が減ると、市場の未来はどう変わるのかでは、東京都中央卸売市場の仲卸業者数を中心に見ました。この記事では、その手前にある全国の数字を整理しました。

いまの段階では、「全国的にこうだ」と強く言い切るより、公開データから見える変化を一つずつ分けておくほうがよいと考えています。

市場数は減っている。仲卸業者数も減っている。中央卸売市場の取扱金額も減っている。特に水産では、仲卸業者数と取扱金額の減少が大きく見える。

まずはここまでです。次に見るなら、東京都水産の数量、金額、平均価格です。数量が減っているのに金額が大きく落ちていない場合、単価上昇がどれくらい影響しているのかを確認できます。全国の大きな流れを見たあとで、東京や主要都市のデータを重ねると、地域ごとの差も見えやすくなります。

おすすめの記事

参考にした一次情報

この記事について、現場の声をお寄せください

いちばのみらいは、市場に関わる方々の経験や問いから育てていくメディアです。記事への感想、取り上げてほしいテーマ、現場で感じていることがあればお知らせください。