全国の仲卸業者数はどれくらいあるのか。卸売市場データから見る市場の現在地
農林水産省の卸売市場データ集をもとに、全国の中央卸売市場、地方卸売市場、品目別の仲卸業者数と取扱金額を整理し、変化をグラフで見ます。
農林水産省の卸売市場データ集をもとに、全国の中央卸売市場、地方卸売市場、品目別の仲卸業者数と取扱金額を整理し、変化をグラフで見ます。
市場について話すとき、「仲卸が減っている」「市場の取扱量が減っている」という言葉はよく出てきます。ただ、言葉だけでは、どれくらい減っているのかが見えにくいところがあります。
この記事では、農林水産省の「卸売市場データ集 令和6年度」をもとに、全国の卸売市場数、中央卸売市場の仲卸業者数、取扱金額を整理します。
ここで書く内容は、公開資料をもとにした読み取りです。全国のすべての市場事情を断定するものではありません。特定の市場や会社の現場を手伝う中で見えてきた問題意識を、まず公開データと照らしてみるための入口として読んでください。
農林水産省のデータ集では、中央卸売市場は令和6年度末時点で64市場、39都市にあります。中央卸売市場の仲卸業者数は令和5年度末で2,685業者、取扱金額は令和5年度で3兆7,436億円です。
この現在値だけを見ると、まだ大きな流通インフラであることは分かります。ただ、記事として見たいのは「いま何件あるか」だけではありません。どの指標が、どの期間で、どれくらい減っているのかです。
公開データから、まず次の3つを並べて見ると、変化がかなりつかみやすくなります。
| 指標 | 比較 | 減少幅 |
|---|---|---|
| 中央卸売市場数 | H19 81市場 → R6 64市場 | 17市場減、約21.0%減 |
| 地方卸売市場数 | H19 1,237市場 → R5 909市場 | 328市場減、約26.5%減 |
| 中央卸売市場の仲卸業者数 | H25 3,665業者 → R5 2,685業者 | 980業者減、約26.7%減 |
| 中央卸売市場の取扱金額 | H19 4兆5,762億円 → R5 3兆7,436億円 | 8,326億円減、約18.2%減 |
この表だけでも、いくつかのことが見えてきます。市場数も、仲卸業者数も、取扱金額も減っています。ただし、減り方は同じではありません。
たとえば、中央卸売市場数はH19からR6で約21%減です。一方、中央卸売市場の仲卸業者数はH25からR5で約27%減です。比較期間が違うので単純には並べられませんが、少なくとも「市場数だけでなく、市場の中で担う人の数も減っている」と見ることはできそうです。
現在値を整理すると、中央卸売市場と地方卸売市場は次のようになります。
| 区分 | 市場数 | 取扱金額 | 卸売業者数 | 仲卸業者数 | 売買参加者数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 中央卸売市場 | 64市場・39都市 | 3兆7,436億円 | 153 | 2,685 | 19,845 |
| 地方卸売市場 | 909市場 | 2兆9,768億円 | 1,063 | 2,198 | 78,634 |
ここは少し注意が必要です。中央卸売市場の仲卸業者数と、地方卸売市場の仲卸業者数は、制度や市場ごとの運用が違います。なので、「全国の仲卸は合計で何社」と単純に足し上げるより、まずは中央と地方を分けて見るほうがよさそうです。
中央卸売市場は、大都市圏や広域流通の拠点としての性格が強い市場です。一方で、地方卸売市場は地域の流通を支える市場として、数の上ではかなり多く残っています。
この違いを分けておくと、次の記事で東京都、大阪、名古屋、福岡などを比較するときにも、見方がぶれにくくなります。
中央卸売市場の仲卸業者数を品目別に見ると、令和5年度末では水産物が1,383業者、青果が1,177業者です。仲卸業者数の多くは、この2分野に集中しています。
変化を見ると、H25からR5にかけて、青果は1,453から1,177へ減っています。減少幅は276業者、約19.0%減です。水産物は2,036から1,383へ減っており、減少幅は653業者、約32.1%減です。
食肉も73から50へ減っており、減少率は約31.5%です。ただし、食肉はもともとの業者数が少ないため、水産物のように減少数そのものが大きいわけではありません。「その他」は母数が小さく、減少率だけが大きく見えやすいため、ここでは主要品目の比較から外しています。
| 品目 | H25 | R5 | 減少幅 | 減少率 |
|---|---|---|---|---|
| 青果 | 1,453 | 1,177 | 276減 | 約19.0%減 |
| 水産物 | 2,036 | 1,383 | 653減 | 約32.1%減 |
| 食肉 | 73 | 50 | 23減 | 約31.5%減 |
| 花き | 88 | 72 | 16減 | 約18.2%減 |
| 計 | 3,665 | 2,685 | 980減 | 約26.7%減 |
もちろん、この数字だけで「なぜ減ったのか」までは言えません。漁獲量、入荷量、専門小売店の減少、飲食店の仕入れ方、量販店との取引、物流費、人手不足など、複数の要因を見ないと説明しきれないはずです。
ただ、全国データの入口としては、水産物は「減少率も大きく、減少数も大きい」ため、次に深掘りする優先度が高い品目だと見てよさそうです。
中央卸売市場の取扱金額は、H19からR5までの長期で見ると減っています。ただし、品目別に同じ形で比較するなら、全品目の数字がそろっているH25とR5を並べるほうが見やすくなります。
H25からR5で見ると、青果は1兆9,178億円から1兆8,968億円へ、約1.1%減です。水産物は1兆6,014億円から1兆4,178億円へ、約11.5%減です。一方で、食肉は2,475億円から2,958億円へ増えています。
| 品目 | H25 | R5 | 変化幅 | 変化率 |
|---|---|---|---|---|
| 青果 | 1兆9,178億円 | 1兆8,968億円 | 210億円減 | 約1.1%減 |
| 水産物 | 1兆6,014億円 | 1兆4,178億円 | 1,836億円減 | 約11.5%減 |
| 食肉 | 2,475億円 | 2,958億円 | 483億円増 | 約19.5%増 |
| 花き | 1,268億円 | 1,179億円 | 89億円減 | 約7.0%減 |
| 計 | 3兆7,132億円 | 3兆7,436億円 | 304億円増 | 約0.8%増 |
この期間で見ると、合計はほぼ横ばいです。ただし、品目別に見ると、水産物は減少、食肉は増加という違いがあります。
ただし、取扱金額だけではまだ足りません。金額は、数量と単価の掛け算です。数量が減っても、単価が上がれば金額の落ち込みは小さく見えることがあります。逆に、金額が減っている場合でも、それが数量減なのか、単価低下なのか、品目構成の変化なのかは分けて見る必要があります。
その意味で、全国編はあくまで入口です。次に見るべきなのは、数量、金額、平均価格を同じ期間で並べることです。
ここは、まだ断定せずに見たいところです。農林水産省のデータ集だけで「原因はこれ」と言い切るのは難しいからです。
ただし、同じ資料の中でも、水産物の減少を読むための手がかりはいくつかあります。
1つ目は、取扱金額の変化です。全品目で比較できるH25からR5で見ると、中央卸売市場の水産物取扱金額は1兆6,014億円から1兆4,178億円へ減っています。金額ベースで約11.5%減です。同じ期間で、合計はほぼ横ばいなので、水産物だけを見ると弱さが出ている可能性があります。
2つ目は、仲卸業者の経営指標です。令和5年度の中央卸売市場仲卸業者の経営動向では、水産物の営業利益率は-0.1%です。また、水産物の仲卸法人企業のうち、営業損失を計上した割合は53.5%、経常損失を計上した割合は40.5%とされています。これは、撤退や統合が起きやすい環境かどうかを見るうえで重要な数字です。
3つ目は、買い手側の構造です。令和5年度末の中央卸売市場の水産物売買参加者数は3,431で、業種別割合では一般小売店が47.8%、その他の事業者が26.9%です。一般小売店や飲食店などの買い方が変わると、仲卸が得意としてきた小口対応、品揃え、目利き、配送の役割にも影響が出る可能性があります。
つまり、水産物の仲卸業者数が大きく減っている背景は、単に「魚が売れない」という一言では説明しないほうがよさそうです。取扱金額、数量、単価、買い手の変化、仲卸業者の収益性を重ねて見る必要があります。
この記事では、市場の将来について大きく言い切ることは避けます。公開データを見ても、すぐに「市場はこうなる」と断定できるほど単純ではないからです。
ただ、少なくとも次のような問いは立てられます。
この問いを置くために、全国の市場数、仲卸業者数、取扱金額をまず可視化しました。ここから東京都、名古屋、大阪、福岡などの主要都市に進むと、より具体的な違いが見えてくるはずです。
仲卸業者が減ると、市場の未来はどう変わるのかでは、東京都中央卸売市場の仲卸業者数を中心に見ました。この記事では、その手前にある全国の数字を整理しました。
いまの段階では、「全国的にこうだ」と強く言い切るより、公開データから見える変化を一つずつ分けておくほうがよいと考えています。
市場数は減っている。仲卸業者数も減っている。中央卸売市場の取扱金額も減っている。特に水産では、仲卸業者数と取扱金額の減少が大きく見える。
まずはここまでです。次に見るなら、東京都水産の数量、金額、平均価格です。数量が減っているのに金額が大きく落ちていない場合、単価上昇がどれくらい影響しているのかを確認できます。全国の大きな流れを見たあとで、東京や主要都市のデータを重ねると、地域ごとの差も見えやすくなります。