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いちばのみらい
市場会計

水産仲卸の売掛金|請求したあと、残高を誰がどう追うか

水産仲卸の売掛金は、請求書を出せば終わりではありません。得意先ごとにいくら残っているかを、誰が、何を見て、どのタイミングで確認しているか。請求後の残高の追い方を現場の流れで整理します。

約11分 いちばのみらい編集部

請求書を出したあと、仕事は終わったように見えます。相手に金額を示し、送付し、控えをファイルに入れた。それでも、得意先から「今、いくら残っていますか」と聞かれたとき、すぐ答えられる現場は多くありません。

水産仲卸の売掛金は、請求書を出したあとに残る金額です。売上の合計でも、通帳に入った金額でもなく、請求した金額のうち、まだ入っていない分です。この記事では、請求後の残高を、誰が、何を見て、どのタイミングで確認するかを整理します。

請求書を出す前の漏れは扱いません。掛けの是非や与信は、仲卸はなぜ「利息を取らない銀行」になるのかで扱っています。この記事ではそこに踏み込まず、請求したあとの残高が、会社の中で追えているかどうかを見ます。

請求したあと、残高を追う流れ

請求したあとに残るのが、水産仲卸の売掛金

朝の売場が一段落し、事務所で請求書をまとめる。得意先ごとに期間を切り、伝票を集め、金額を出す。送付まで終わると、その週の仕事は一段落した気持ちになります。

数日後、得意先から電話が来る。「先月分は振り込んだはずだけど、残はいくら」。事務所では、請求書の控え、入金のメモ、通帳のコピーを並べて答えを探す。このとき探している数字が、売掛金の残高です。

農林水産省の資料では、卸売市場の主要機能として、集荷・分荷、価格形成、代金決済、情報受発信が整理されています。ここでいう代金決済は、出荷者への支払いを迅速かつ確実に行う機能です。

請求書は「いくらです」と示しただけ

請求書は、相手に「この期間の取引は、この金額です」と示す文書です。示した時点では、お金はまだ動いていません。

現金でその場が終わる取引なら、渡すと同時に残高はゼロになります。掛けで渡している取引では、請求したあとも残高が残ります。残っていること自体が問題なのではなく、残が今いくらかを、聞かれたときに同じ数字で答えられるかが問題です。

残高は、請求と入金の差として残る

残高を見るときは、次の3つを並べます。

  • 請求した金額
  • 入った金額
  • その差(残)

売上がいくらだったかだけを見ても、残高は分かりません。通帳に入金があったことだけを見ても、どの請求の残が減ったのかは分かりません。残を追うとは、この3つを得意先ごとに見続けることです。

数字で見ると分かりやすいです。ある飲食店向けに、前回請求が12万円、その後8万円の入金があり、今週また4万円を請求したとします。売上だけ見ると「今週は4万円」、通帳だけ見ると「8万円入った」になります。残として見るなら、前回の残り4万円に今週の4万円を足した8万円です。同じ得意先でも、見る表が違うと答えが3つに割れます。

水産仲卸では、同じ得意先に週のうち何度も納品することがあります。請求の期間が短く、残を聞かれるタイミングも、次の注文の電話に乗ってくることが多いです。だから残高は、月末の決算作業というより、日常のやり取りの途中で必要になる数字です。

請求書を出す前の確認は、市場の請求漏れを防ぐチェックリストで扱っています。この記事は、出したあとの話です。

残高が見えにくくなる理由

残高が見えなくなるのは、担当者が雑だからではありません。見る場所が分かれていると、残は自然に曖昧になります。

売上の数字と、残っている金額を同じものとして見ている

売上は、その期間にいくら売ったかです。売掛金の残高は、そのうちいくらがまだ入っていないかです。同じ得意先でも、数字は一致しません。

たとえば、今月の売上が大きい得意先でも、先月分まで入っていれば残は小さいことがあります。逆に、今月の売上が少なくても、前月以前の分が残っていれば、残は大きく見えます。売上表だけを見ていると、「よく売れている相手」と「残が多い相手」が同じに見えてしまいます。

入金を「あり/なし」でしか見ていない

入金確認を、請求書1枚に対して「入った/入っていない」の二択で見ていると、途中の状態が残りません。

現場では、請求額の一部だけ振り込まれる、複数回の請求が1回の振込にまとまる、返品や値引きが請求後に入る、といったことが起きます。二択だと、「入金あり」にしたあとで残が残っていることに気づきにくくなります。

ここでは、振込をどの請求に割り当てるかの細かい手順には入りません。先に決めたいのは、入金があった事実と、残額がいくらになったかを、別の欄で見ることです。

先月の残りと、今月の請求が別の束になっている

請求書は月ごと、または締め期間ごとに作られます。一方で、入金は相手の都合の日に来ます。先月の請求控えと、今月の請求控えと、通帳のメモが別の場所にあると、得意先1社の残を足し上げる作業が発生します。

この足し上げを、聞かれた瞬間に頭の中でやっていると、答えるたびに数字がずれます。残は、期間ごとの束ではなく、得意先ごとの一本の数字として見えたほうが扱いやすいです。

聞かれたときに答える人と、数字を見ている人が違う

請求書を作った人、通帳を見た人、得意先と話している人が、それぞれ別のメモを持っていることがあります。

得意先が聞く相手は、日頃やり取りしている担当者です。その人が見ているのが請求書の控えだけで、入金の記録が別の人の机にあると、「請求した金額」と「今の残」が入れ替わって伝わります。残高を追う仕事は、数字を更新する人だけでなく、聞かれたときに答える人まで含めて見る必要があります。

誰が、何を見て、追うのか

残高確認を続けるコツは、項目を増やすことではありません。見る人、見るもの、見るタイミングを先に決めることです。

残高確認で見る人と見るもの

役割で分ける

少人数の事務所でも、役割の名前だけは分けておきます。同じ人が兼ねていても構いません。人名で書くと、その人が休みの日に止まります。売場に出ている時間と、事務所にいる時間が分かれている店では、特に「答える人」を先に決めておいたほうが混乱しにくいです。

  • 請求の控えを残す人
  • 入金の記録を残す人
  • 得意先別の残を更新する人
  • 得意先に「今の残」を答える人

最後の「答える人」を決めておくと、電話のたびに事務所が止まりにくくなります。答える人が見る場所を1つにしておくことが、ここでの目的です。

月末締めを早くするために見直す5つの確認項目では、締めや請求の確認を、担当者の記憶ではなく確認順として扱う考え方を整理しています。残高も同じで、誰かの頭の中ではなく、決めた場所を見るようにします。

見るものを3つに絞る

最初から会計ソフトの科目や仕訳に寄せる必要はありません。現場で使うなら、次の3つで足ります。

  1. 請求の控え(いつ、どの得意先に、いくら示したか)
  2. 入金の記録(いつ、いくら入ったか。通帳のメモでもよい)
  3. 得意先別の残(請求と入金の差。今いくら残っているか)

1と2が別の束のままだと、3は毎回計算し直すことになります。3を一覧にしておくと、「今いくら」を聞くたびに束を開けなくて済みます。

紙でもExcelでも構いません。大切なのは、3つが同じ得意先名でつながっていることです。屋号、略称、担当者名が混ざっていると、残は得意先の数より多く見えます。

見るタイミングを決める

全得意先の残を、毎日見る必要はありません。残がある相手、残が動いた相手、聞かれやすい相手に絞ります。

実務では、次のどれか1つを先に決めます。

  • 入金を記録した日に、その得意先の残だけ更新する
  • 週に一度、残がある得意先だけを見る
  • 得意先から残を聞かれた日に、必ず3を更新してから答える

月末だけまとめて見ると、残の更新と自社の月末締めが同じ週に重なります。締め作業では伝票回収や入力確認で時間が取られます。残高の更新を月末に寄せすぎないほうが、締めの週は楽です。

得意先別に残高を確認する項目

一覧は、列を増やしすぎないほうが使われます。最初は、次の項目で足ります。

項目見る理由
得意先名残は得意先ごとの一本の数字として見る
最終請求日と請求金額「いくら示したか」の起点にする
直近の入金日と入金額「いくら入ったか」を残と分けて見る
現在の残額聞かれたときに答える数字
最終確認日いつ見た残かが分かるようにする
確認した役割誰の数字かを後から辿れるようにする
短いメモ一部入金、請求後の返品など、残が動いた理由

この表は、与信枠や回収予定の管理表ではありません。聞かれたときに、同じ残を返すための表です。

現場で使うときの順番

確認は、上から全部埋める作業ではありません。残が動いたときだけ、動いた行を直します。

  1. 請求書を出したら、請求日と請求金額を書きます。残額は、前回の残に今回の請求を足した数にします。
  2. 入金を記録したら、入金日と入金額を書きます。残額から入金額を引きます。
  3. 請求後に返品や値引きが分かったら、残額を直し、メモに理由を一行残します。
  4. 得意先に残を伝える前に、最終確認日を今日にします。

電話の途中で通帳と請求書を同時に開かない、と決めておくだけでも、答える数字は安定します。先に一覧を見て、分からなければ「確認して折り返す」ほうが、その場の概算よりあとが楽です。

よくあるずれ方

残高のずれは、大きなミスというより、見る場所の取り違えで起きます。請求書の合計を残として答えてしまう、通帳に入金があったので残はゼロだと思ってしまう、先月の残を見ないまま今月の請求だけを残だと思う。一部入金のあと残の更新を忘れて「入金済み」とだけ残る、請求後の返品が残に反映されない、といったことも起きます。

ずれに気づいたときは、正しい残を先に直します。なぜずれたかのメモは短くてよく、犯人探しにはしません。同じずれが繰り返す項目だけ、確認の順番に足します。

会計入力のミス全般は、魚市場の会計業務でよくあるミス5選でも整理しています。この記事で見るのは、そのうち「請求したあとの残」に限った確認です。

小さく始めるなら

売掛金の残高管理を、最初から全得意先・全期間で始めなくて構いません。残が残りやすい相手、よく残を聞かれる相手からで十分です。

  1. いま残がある得意先だけを書き出す
  2. 請求金額、入金額、残額の3列を作る
  3. 得意先名の呼び方を1つにそろえる
  4. 残を答える人と、答えるときに見る場所を決める
  5. 週に一度、残が動いた行だけを見直す

この5つで、売掛金は「請求書の束」から「今いくら残っているか」に変わります。仕訳や税の処理に進むのは、残が同じ場所で見えるようになってからです。最初の週は、残の金額が正確かどうかより、答える場所が1つになったかどうかを見ます。

請求後の残高を追う仕事は、回収を厳しくするためだけのものではありません。得意先が残を聞いてきたときに、事務所の中で数字が割れないようにするための確認です。残が見えていると、次に何を確認すべきかも話しやすくなります。

請求後の残高確認や、得意先ごとの残の追い方で同じ悩みがある場合は、現状の流れを一緒に確認できます。紙やExcelを残しながら整理する進め方も含めて、お問い合わせから課題整理としてご相談ください。

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