本文へ移動
いちばのみらい
市場会計

水産仲卸の帳場|控えと事務所の数字が、閉場後に合わない理由

水産仲卸の帳場では、閉場後に控えと事務所の数字が合わないことがあります。人が雑なのではなく、同じ取引を別の冊に書いているからです。二冊がずれる理由と、小さくつなぐ手順を整理します。

約8分 いちばのみらい編集部

閉場後、帳場の控えを持って事務所へ戻り、数字を足す。同じ日の取引なのに、帳場の控えと事務所の表が合いません。毎日帳面を合わせる理由は、なぜ市場では毎日「帳面合わせ」をするのかで扱っています。この記事で見るのは、その前のずれです。帳場と事務所が、同じ取引を別の冊に書いていることです。

水産仲卸の帳場は、売場でその日の取引を書き留める場所です。事務所は、あとから数字をまとめる場所です。人が雑だから合わないのではありません。書く場所が二冊あると、得意先名の呼び方、書くタイミング、写す人が少し違うだけで、閉場後に足しても合いません。

帳場の控えと事務所の数字は、別の冊

閉場後に合わないのは、帳場と事務所が別の冊だから

売場を閉めたあと、帳場のノートや伝票の控えを一束にして事務所へ持っていきます。事務所には、別の表があります。Excelの場合も、紙の台帳の場合もあります。両方を開いて足すと、合計がずれます。片方にしかない行があります。同じ得意先なのに、名前の書き方が違います。

帳場の控えは、その場で間に合わせた記録です。事務所の数字は、あとからまとめ直した記録です。どちらも「今日の取引」を指しているつもりでも、最初から一冊ではありません。

たとえば、帳場では「田中さん 鯛 8,000」と一行あります。事務所の表では「田中鮮魚 売上 12,000」とあります。足すと合いません。中身を見ると、帳場の8,000に、昼の追加4,000が事務所だけに入っています。合計の差を先に追うと、原因は見えません。同じ相手の行を並べたときに、初めて追加分が見えます。

帳場の控えは、その場の取引の記録です

帳場では、納品の途中や、次の客が来る前に書きます。屋号で書くことも、担当者の名前で書くこともあります。数量と金額だけ先に残し、品名は後回しにすることもあります。大切なのは、その場で忘れないことです。きれいな一覧にすることではありません。

事務所の数字は、あとからまとめた記録です

事務所では、帳場の控えを見ながら、別の表に写します。得意先名を正式な呼び方に直す、日付をそろえる、現金と掛けを分ける。このとき、控えにない判断が入ることがあります。写す人が、帳場で書いた人とは限りません。

二冊は、同じ取引の写し合いです。原本が一つで、写しが一つ、という関係にはなっていません。

二冊が同じ取引を指さなくなる理由

ずれは、大きなミスというより、書く条件の違いで起きます。

得意先名の呼び方が違います

帳場では「○○さん」で通ります。事務所の表では屋号、略称、請求先名のどれかで並んでいます。同じ店でも、呼び方が違うと、閉場後に足したときに別の行になります。片方は残っているのに、もう片方は別の名前で消えたように見えます。

つなぐときは、金額より先に、呼び方を一つに決めます。帳場で使っている呼び方を、事務所の表の一行にメモするだけで足ります。全得意先の正式名称を作り直す必要はありません。

書くタイミングが違います

帳場は、取引の直後に書きます。事務所は、閉場後にまとめて書きます。その間に、追加の納品、返品、値引きの口約束が入ります。帳場の控えには残っているのに、事務所へ持っていく束には入っていない。あるいは、事務所の人が電話で聞いた話だけが表に入り、帳場の控えにはありません。

閉場後に合わないときは、合計の差だけを見ないで、片方にしかない行を先に見ます。差の正体は、多くの場合、その行です。

写す人が違います

帳場で書いた人と、事務所で表を直す人が違うと、読み取り方が分かれます。数字の隣のメモを、金額に含める人、含めない人がいます。現金で終わった行を、事務所では掛けの表に置いてしまうこともあります。

ここから先の、請求したあとの残を追う話は、水産仲卸の売掛金|請求したあと、残高を誰がどう追うかに譲ります。帳場の段階では、残の管理に入る前に、同じ取引が同じ行を指しているかを見ます。入金をどの請求に当てるか、相手の締日で切るかは、次の話です。

合わないときに、先に見るもの

確認は、全部を作り直す作業ではありません。いま手元にある控えと、事務所の表を、同じ得意先名で見ることです。

閉場後に見る三つの地点

見るものは、次の三つに絞ります。得意先名が同じ呼び方になっているか。帳場の控えにしかない行、事務所の表にしかない行はないか。写した人と、帳場で書いた人が違う行に、短いメモがあるか。

現金が合わないときは、二冊がずれたあとの症状として出ることがあります。現金そのものの過不足は、一日の会計を締めたら合わない。市場の現金差異はなぜ起きるのかで扱っています。この記事では、現金箱を数え直す前に、控えと表が同じ行を指しているかを見ます。

判断のポイントは、合計を合わせることではありません。同じ取引が、二冊で同じ相手、同じ日、同じ金額を指しているかです。そこが揃ってから、合計は後で足せます。売場の配置を変える話でも、新しい表を一から作る話でもありません。いまある控えと、いまある表を、同じ呼び方で見ることです。

小さく始めるなら

全得意先を対象にしないでください。帳場のレイアウトも、事務所の表の作り直しも、あとです。まずは、いま残っている控えがある相手だけを見ます。

  1. 閉場後に手元へ残った控えを、相手ごとに分けます。
  2. 事務所の表で、同じ相手の行を探します。見つからなければ、帳場の呼び方のまま一行足します。
  3. 両方にある行は、得意先名を一つの呼び方にそろえます。
  4. 片方にしかない行は、消さないで、短いメモを残します。
  5. つながった行だけ、金額を見ます。

この五つのあとで、帳場の控えと事務所の表は、同じ取引を指し始めます。二冊を一冊に潰す必要はありません。閉場後に見比べるとき、同じ相手が同じ行で見つかれば足ります。

帳場の控えと事務所の数字の置き場を揃えたい場合は、紙やExcelを残したまま、現状の二冊の流れを一緒に確認できます。お問い合わせから、課題整理としてご相談ください。

おすすめの記事

この記事について、現場の声をお寄せください

いちばのみらいは、市場に関わる方々の経験や問いから育てていくメディアです。記事への感想、取り上げてほしいテーマ、現場で感じていることがあればお知らせください。